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debsy shinobi

「稔麿,三津さん入ってもいいか?」

「稔麿,三津さん入ってもいいか?」

 

 

久坂の声に吉田は三津の様子を窺った。

 

 

「大丈夫です。」

 

 

声を掛ければ久坂が一人中に入って来て障子を閉めるとその場に座った。

 

 

「遠くないですか?」

 

 

「近寄っても大丈夫です?」 擔心植髮手術後遺症風險?其實植髮十分安全! -

 

 

気を遣ったが三津がそう言うならと少しずつにじり寄った。

 

 

「腕や脚にある傷に使えるかと思って他に痛む所があるなら言ってください。また用意します。」

 

 

塗り薬をそっと差し出した。

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

何とか弱々しく笑う事が出来た。

 

 

「しばらく湯浴みは滲みますねぇ。」

 

 

「仕方ないです自業自得なんで。言う事聞かなかった私が悪いんです。

帰ってみんなにお酌してる方が楽しいやろなって思っちゃって早く帰りたくなってもて。」

 

 

あの空間は息苦しかった。でも今思えば耐えれたんじゃないか。

土方に陵辱されるぐらいなら,きっと耐えれた。

 

 

「うぅ……。ごめんなさい……。」

 

 

思い出すとすぐ溢れる。どれだけ泣けば泣かずに済むのか。

ぐずぐず鼻を啜って必死に涙を拭った。

 

 

「だから謝るなって。俺らと居る方が楽しいと思ってくれたんだ?そりゃ嬉しいね。なぁ?玄瑞。」

 

 

吉田は笑顔で三津の頭をぐりぐり撫でて横目で久坂を見た。

 

 

「当たり前だろ。喜んでお酌されるさ。今からでもいい。

愛らしい姿もいいがその着流しも中々似合ってるな。」

 

 

「あ……これ。私には大きいですね。吉田さんのじゃ。」

 

 

鼻を啜りながら手が隠れてしまうと袖をひらひらさせた。

 

 

「後で着替え持ってくるよ。

俺の匂いにちょっとは落ち着いてくれた?」

 

 

いたずらっぽく笑ったのを見て三津は袖に顔を寄せて匂いを嗅いだ。

 

 

「いや,改めて嗅がれるとちょっと嫌なんだけど。」

 

 

「うん,落ち着きましたこの匂いに。」

 

 

いつも通り三津が笑った。

それには久坂もうっすら笑みを浮かべた。

 

 

「薬も渡したし俺はこれで。」

 

 

「は?変な気遣うな。」

 

 

吉田が引き留めようとしたが久坂は手を振り部屋を出て行ってしまった。

 

 

「気を遣わせて……。」

 

 

「謝るな。」

 

 

「はい。すみません……。」

 

 

被せ気味に釘を刺されたのに結局謝ってしまった。それには吉田も呆れ顔で笑った。

 

 

……三津が笑ってくれるなら何だってするさ。」黒い髪を撫でて指で梳いた。

 

 

「綺麗な髪。下ろしてると少し大人びて見えるね。」

 

 

「あ……。頭からお湯被ったの忘れてました……。」

 

 

両手で頭を押さえた。そう言えば簪に結い紐に脱ぎ捨てた着物達はどうしたっけな。

 

 

「三津が風呂場に置いてきた一式はサヤさんが綺麗にしてくれてるよ。」

 

 

心の声が漏れてたかの様にすかさず吉田が答えてくれた。

 

 

「あぁ……。そうでしたか……。」

 

 

「構わない。彼女の仕事だ快くやってくれてる。

それよりも三津が何も食べない事が心配だと言ってた。無理に食べる必要もないが少しは口にしてくれ。」

 

 

それでみんなに心配をかけずに済むなら食べるしかない。三津は分かったと何度も頷いた。

 

 

「いい子だ。俺は着替えを取りに行くよ。一人でも平気?まぁここは安全だから心配は無用だけど。」

 

 

また何かを思い出した時に取り乱さないかが心配だった。今朝夢で魘されてたような事が起きないか。

 

 

「話したら落ち着いて来ました。」

 

 

「そう,じゃあ待ってて。」

 

 

三津の頬をふわりと撫でて部屋を出た。

吉田が部屋を出て少ししてから入江がやって来た。

 

 

「三津さん起きてる?」

 

 

「はい,どうぞ。」

 

 

「良かった顔色少し戻りましたね。」

 

 

少しだけ障子を開いて入江はほっとした顔を見せた。

 

 

「入っても大丈夫ですよ。久坂さんも同じように遠慮してましたけど。」

 

 

じゃあ近くに寄りますよと布団の脇に座った。

入江が来てくれたのは好都合なのかもしれない。あまり整理はついていないが吐き出したい事がある。

 

 

「入江さんやから話せる事なんですけど……話してもいいですか?」

 

 

「他言無用なヤツですね?構いませんよ。」

 

 

前に土方に口付けをされた話を知ってるのは自分だけだ。

だから三津が何か話せるのも自分だけだと入江は分かっていた。

 

 

三津は小さく頷いて口を開いた。

 

 

「土方さんに好きだと言われました……

……凄い怖い……思いしたんです。

なのにあんな事しといて土方さんの顔……辛そうで……

なのに好きって……。私には分からんくて。」

 

 

三津が混乱しながらも土方の気持ちを汲み取ろうとしているのだと気付いた。

 

 

……鬼と言えど人ですからね。人であり三津さんの前ではただの男だった。」

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