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debsy shinobi

屋さんだよ」

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屋さんだよ」

屋さんだよ」

 

大きな松の木が店先にあり、白い がかかってある。

伝書鳩係の男は車を停め、二人はがお勧めだよ」

 

「それでは、私もざるを待っている間、伝書鳩係の男が口を開いた。

 

「我々の発行している新聞の大阪版に、の『近代の恋愛観』という連載がはじまってね。それが非常に好評なんだよ」

 

「恋愛について述べた連載なんですか?」「あぁ。『恋愛は神秘的で、ひらめくものだ』と彼は語っている。そして『心と身体ともに結ばれ、それが個人と個人の間に生まれることは恋愛のほかにない。性的にも霊的にも、自我を満足させるのは恋愛のみ可能だ』と言っている」

 

……私も惹かれてしまいそう。連載が人気というのも、うなずけます」

 

「単刀直入にここまで言い切られるとね、胸を打つよ。人気があるから、いずれ書籍になるんじゃないか」

 

「ぜひ読んでみたいです。心と身体ともに結ばれたいのは、男も女もそうに違いありませんし。恋愛のみが、そのような存在だと私も信じています」

 

ざるをすすった。

さらに伝書鳩係の男が続けた。擔心植髮手術後遺症風險?其實植髮十分安全! -

 

「お嬢さんは素敵な恋をしているようで、何よりじゃないか」

 

「ただ、仕事との両立は難しいです。運転する方のほとんどが、男性ですから」

 

「なるほどね。いつも別の男と逢い引きしているように見えるから、相手も気になるだろうね」

 

「おっしゃる通りです。実は先日、お客様から嫌な目にも遭いましたし」

 

「もしや、望まない誘惑か」

伝書鳩係の男の鋭い指摘に、ひゐろは黙ってうなずいた。

 

……まぁ、そういうことはあるだろうな」伝書鳩係の男は、店内を見回してお品書きを見た。

 

「ここは、天ぷらもおいしいよ。食べてみるかい?」

 

「はい。ぜひとも!」

 

ひゐろは遠慮せず、天ぷらもお願いした。

 

「差し出がましいようだが、その男とは結婚する予定なのかい?」

 

……いえ、それはまだ。相手は書生さんですし」

 

「書生か。それでは、『仕事を辞めてくれ』とは言えないだろうな。しかも夫でもない男では、それを言える立場でもないだろうし」

 

「その気持ちがわかるからこそ、悩んでいるのです」

 

……なるほどね」

 

ひゐろも伝書鳩係の男も、も天ぷらもしっかりを平らげた。

 

「ごちそうさまでした。おなかいっぱいです」

ひゐろは、伝書鳩係の男にお辞儀をした。

 

「この先においしいの珈琲の店があるから、そこでお茶だけ飲んでいこう」

 

「よろしくお願いします」

伝書鳩係の男は再び車を運転し、の珈琲の店へ向かった。

 

伝書鳩係の男は、東側を指差した。

 

「あの辺りは明治の頃に、埋め立てられたんだよ。かつては舟路があったのさ」

 

「そうなのですね!私には、想像できないですが」

 

「東京も大きく変わっている。おそらくこれからも、変わるんだろう」店に着くと、早速二人は珈琲を頼んだ。

 

「の珈琲なんて、初めての体験です」

 

「多くの人は、そうだと思うよ。僕は新聞社勤めだから、食や東京市の情報が入りやすいだけで」

 

伝書鳩係の男は一口珈琲を飲むと、ひゐろにこう訊ねた。

「先ほどの話に戻るけれども、お嬢さんはこの仕事が好きなんだろう?」

 

「この仕事は、好きです。たくさんの方々との出逢いがありますし、さまざまなことが学べます」

 

「そうだろうね」

 

「ただ、必ずしもこの仕事でなくても良いのかもしれません。ただ、職業婦人ではいたいです。自分の力で、稼いでいたいのです」

 

「そうか。それなら単刀直入に、相手に伝えるべきだな」

 

「はい。今日の夕方に会うので、それを伝えてみるつもりです」

伝書鳩係の男の助言に、ひゐろの気持ちは少し晴れやかになった。

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