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三津と文はフサに向かってそんな子に手を出してやぁねとにっこり笑いかけた。
「二人の事やけ黙っちょかんといけんのやけど女として黙っとられんわ。」
三津の横に閻魔が降臨した。
「女はいつまで政の犠牲にならんといけんのですか。」
「入江さんこそ黙っちょき!」
「はい,ごめんなさい。」
文の気迫に負けた。でも文が言いたいのも分かる。文だって犠牲者だ。政に夫を殺された犠牲者だ。
「桂様は本当に三津さんを幸せに出来るそ?」
「私はそうしたい……。」
「したいかしたくないかやなくて出来るか出来んか聞いとるそ!」
文がバンっと畳を叩いた。それにビクッとしたのは男二人だけだ。
「出来る!三津を幸せに出来るのは私だけだ!」
「やって。三津さんどう思う?」
「それはこれからまた一緒に過ごしてみんと分かりません。」
「じゃあこれからも一緒に過ごしてくれるのか?」
桂は今にも泣きそうな情けない顔で三津を見た。だが三津の表情は渋いままだった。
「一緒には過ごせますけど今まで通り出来るかって言われたら出来ません。夫婦になるつもりも今のところありません。」
きっぱり面と向かって言われたのが相当堪えた。桂は深く息を吐いて下を向き,両手で顔を覆ってしまった。
「小五郎さん,それだけの事があって根に持つ私には今まで通りなんて無理です。無理やけど関係を作り直す事は考えます。それが夫婦と言う形にならないかも知れないと言う話です。」
「関係を作り直す?夫婦じゃない形で?でも上手く行けば夫婦になれるのかい?」
桂は顔から手を外して前を向いた。三津もしっかり前を向いている。
「上手く行けば……。それもまだ先の話になるので分かりません。ただ今の小五郎さんと床を共にするのは絶対嫌です。」
「触るのも駄目?抱きしめるのは?口付けも駄目?もうこれ以上三津に触れられないのなら私は死んでしまう……。」
桂は頭を抱えてから畳に手をついて項垂れた。
「桂様重症ですね。」
「そうだよ……。三津に全身の骨を抜かれた軟弱骨なし野郎だよ……。」
死んだ魚のような目で文に向かって笑いたきゃ笑えばいいとやさぐれた。
「軟弱骨なし……ふふっ。」
「笑った?三津笑ったのか!?三津!頼む思う存分笑ってくれ!!」
桂は三津に飛びかかってその体を抱きしめた。三津は悔しいが抱きしめてくる腕と鼻をくすぐる匂いに安心してしまった。「姉上は本当にどの殿方からも愛されちょりますねぇ。羨ましい限りです。」
そう言って熱い眼差しを送ってくるフサに桂ははてと首を傾げた。
「君は……誰だったかな?」
「お初にお目にかかります。吉田フサと申します。」
「稔麿の妹です。」
綺麗な所作で頭を下げたフサを入江が紹介した。
「君が……。桂小五郎です。こんな場に巻き込んで済まない……。」
とんでもない醜態を晒したなと思いながら,桂は三津を離してフサと向かい合って軽く頭を下げた。
「桂様のお噂はかねがね。そこの川で往来の舟ひっくり返して遊んでらした桂様ですよね。」
「間違ってないがそれは何十年も前の話でもっと他にまともな何か……。」
それを教えたのは吉田だなと思った大人達はそれを今も心に留めてるフサを優しい目で見た。
「ところで桂様よくここへ来る時間が取れましたね?」
文の指摘に桂は苦笑した。
「実は仮病使って会合を放棄して馬を走らせた……。」
「へぇ政馬鹿やのに。馬で二日ですか?」
桂を馬鹿呼ばわりする文に入江は吹き出しそうになって慌てて口を抑えた。ここまでまっすぐに桂を罵れるのも文だけだ。
「いや,一日半。」
「頑張ったなぁ……馬。」
きっと高杉がこうなるのを予測して良い馬を用意してたに違いないと入江は思った。
「稔麿,三津さん入ってもいいか?」
久坂の声に吉田は三津の様子を窺った。
「大丈夫です。」
声を掛ければ久坂が一人中に入って来て障子を閉めるとその場に座った。
「遠くないですか?」
「近寄っても大丈夫です?」 擔心植髮手術後遺症風險?其實植髮十分安全! -
気を遣ったが三津がそう言うならと少しずつにじり寄った。
「腕や脚にある傷に使えるかと思って他に痛む所があるなら言ってください。また用意します。」
塗り薬をそっと差し出した。
「ありがとうございます。」
何とか弱々しく笑う事が出来た。
「しばらく湯浴みは滲みますねぇ。」
「仕方ないです自業自得なんで。言う事聞かなかった私が悪いんです。
帰ってみんなにお酌してる方が楽しいやろなって思っちゃって早く帰りたくなってもて。」
あの空間は息苦しかった。でも今思えば耐えれたんじゃないか。
土方に陵辱されるぐらいなら,きっと耐えれた。
「うぅ……。ごめんなさい……。」
思い出すとすぐ溢れる。どれだけ泣けば泣かずに済むのか。
ぐずぐず鼻を啜って必死に涙を拭った。
「だから謝るなって。俺らと居る方が楽しいと思ってくれたんだ?そりゃ嬉しいね。なぁ?玄瑞。」
吉田は笑顔で三津の頭をぐりぐり撫でて横目で久坂を見た。
「当たり前だろ。喜んでお酌されるさ。今からでもいい。
愛らしい姿もいいがその着流しも中々似合ってるな。」
「あ……これ。私には大きいですね。吉田さんのじゃ。」
鼻を啜りながら手が隠れてしまうと袖をひらひらさせた。
「後で着替え持ってくるよ。
俺の匂いにちょっとは落ち着いてくれた?」
いたずらっぽく笑ったのを見て三津は袖に顔を寄せて匂いを嗅いだ。
「いや,改めて嗅がれるとちょっと嫌なんだけど。」
「うん,落ち着きましたこの匂いに。」
いつも通り三津が笑った。
それには久坂もうっすら笑みを浮かべた。
「薬も渡したし俺はこれで。」
「は?変な気遣うな。」
吉田が引き留めようとしたが久坂は手を振り部屋を出て行ってしまった。
「気を遣わせて……。」
「謝るな。」
「はい。すみません……。」
被せ気味に釘を刺されたのに結局謝ってしまった。それには吉田も呆れ顔で笑った。
「……三津が笑ってくれるなら何だってするさ。」黒い髪を撫でて指で梳いた。
「綺麗な髪。下ろしてると少し大人びて見えるね。」
「あ……。頭からお湯被ったの忘れてました……。」
両手で頭を押さえた。そう言えば簪に結い紐に脱ぎ捨てた着物達はどうしたっけな。
「三津が風呂場に置いてきた一式はサヤさんが綺麗にしてくれてるよ。」
心の声が漏れてたかの様にすかさず吉田が答えてくれた。
「あぁ……。そうでしたか……。」
「構わない。彼女の仕事だ快くやってくれてる。
それよりも三津が何も食べない事が心配だと言ってた。無理に食べる必要もないが少しは口にしてくれ。」
それでみんなに心配をかけずに済むなら食べるしかない。三津は分かったと何度も頷いた。
「いい子だ。俺は着替えを取りに行くよ。一人でも平気?まぁここは安全だから心配は無用だけど。」
また何かを思い出した時に取り乱さないかが心配だった。今朝夢で魘されてたような事が起きないか。
「話したら落ち着いて来ました。」
「そう,じゃあ待ってて。」
三津の頬をふわりと撫でて部屋を出た。
吉田が部屋を出て少ししてから入江がやって来た。
「三津さん起きてる?」
「はい,どうぞ。」
「良かった顔色少し戻りましたね。」
少しだけ障子を開いて入江はほっとした顔を見せた。
「入っても大丈夫ですよ。久坂さんも同じように遠慮してましたけど。」
じゃあ近くに寄りますよと布団の脇に座った。
入江が来てくれたのは好都合なのかもしれない。あまり整理はついていないが吐き出したい事がある。
「入江さんやから話せる事なんですけど……話してもいいですか?」
「他言無用なヤツですね?構いませんよ。」
前に土方に口付けをされた話を知ってるのは自分だけだ。
だから三津が何か話せるのも自分だけだと入江は分かっていた。
三津は小さく頷いて口を開いた。
「土方さんに好きだと言われました……。
私……凄い怖い……思いしたんです。
なのにあんな事しといて土方さんの顔……辛そうで……。
なのに好きって……。私には分からんくて。」
三津が混乱しながらも土方の気持ちを汲み取ろうとしているのだと気付いた。
「……鬼と言えど人ですからね。人であり三津さんの前ではただの男だった。」
副長のきれいな掌が、俊春の顔色の悪い頬をやさしくなでる。
「思いっきり泣いたか?」
その問いに、俊春はまたちいさくうなずいた。
「泣きたいときには泣け。いままでとおなじようにな。だが、我慢したり一人でこっそり泣くなんてことはやめろ。おまえは一人じゃない。おれや主計や兼定や勘吾や八郎や沢や久吉や鉄や銀がいっしょだ。丹波にゆけば、
「きみは、そうだね。やっぱりぼくのBL対象にはならないよ。だいいち、きみには好きながたくさんいるじゃないか。副長に八郎君におねぇに……」
「だから、それもちがうって……」
「ムリしなくっていいよ。台灣植髮 きみは、そういうキャラじゃない。受けだけどね」
「だから、それはやめてくれよ」
「きみはやはり受けだけど、気持ちはうれいしよ。ありがとう」
かれは、そういうとおれの項に頬をくっつけてきた。
こいつは、マジで仔犬だ。頬をくっつけてくるって、可愛すぎだろう?
是非とも、どこかの成犬にもやっていただきた……。
「いたっ!相棒、や、やめてくれ」
左脚すぐ後ろのいつもの定位置から、相棒が右前脚でおれの左脚を突っついてきている。
「主計。きみは、ぼくにとっていい年ぶっこいてもなおお笑い芸人を目指していて親の脛をかじって世間的に白い目でみられている、出来の悪すぎる兄さんみたいなものだよ」
「……。そういってくれてうれしいよ」
なんだよ、もう。
おれは、いついつまでも叶わぬ夢を追っているニートってわけだ。
、ダッシュで逃げて」
俊春が背中でくすくす笑いをしながら命じてきた。
「できるかいっ!」
思わず、笑いながらツッコんだ。
またしても、みんなが笑いだした。
笑う門には福来るっていうしな。
笑うのは気持ちがいい。
って、なんかちがう気がするけど……。
とうわけで、あらたな旅のはじまりである。
もう史実に縛られることはない。
これからはおれたちで史実をつくり、残すんだ。
超絶ワクワクどきどきする。
笑い声は、海風にのって蝦夷の地まで流れていくだろう。
これでこそ、「新撰組」だ。
なんか路線がちがう気もするが、そこはまぁいっか。
(了)
※次頁にあとがきがございます。 まずは、第一幕からお読みいただきました読者様、毎日欠かさずスターを投げて下さっていますクリエイターの皆様に心より感謝申し上げます。
坂本龍馬の命を救いたいが為に思いついたのが始まりでした。が、調子にのって執筆を続けておおよそ4年数か月、文字数は約2,460,000文字、原稿用紙に換算すれば約6,150枚、話数は第一幕と合計して1,255話となってしまいました。第一幕の公開開始が2018年4月10日。ちょうど4年間連載させていただきました。
これだけの長編にお付き合いくださいましたこと、あらためてお礼申し上げます。
この4年間で公私ともにずいぶんと変化がありました。一番の変化はコロナです。いまだどうなるかわからない状況ではありますが、皆様方におかれましてはどうかお気をつけ下さい。
今回の兼定執筆ほど妄想が炸裂したことはありませんでした。職場で上司に「副長」(そんな役職はありません)叫んでしまったり、先輩を「土方さん」(そんな名前の人はいません)と呼んでしまったり、お客様に「ときがありませぬ」と言ってしまったりと、やらかしたこと多数ありました。
現在は、そんな影響もじょじょに薄れつつあります。
そうでした。作中で関西人や関西弁について言及しているシーンが多々ありますが、けっして悪意はありません。わたし自身、生まれも育ちも大阪でこてこての大阪人です。物心ついたときから常に笑いをとることで必死です。ツッコミもボケも出来ます。いっしょにいる相手によってかえます。上司や先輩とだったらボケ、後輩や年少者とでしたらツッコミというように。
関西人の方で作中の表現をご覧になり、ご不快に思われた方もいらっしゃるはずです。この場をお借りしてお詫び申し上げます。
本作の執筆は2021年12月末頃に終わっておりましたが、その少し前から他サイトで他ジャンルの短編や中編の執筆の修行をはじめました。他のジャンルで短編や中編というのがこれがまた難しく、まだまだ続きそうです。その為、こちらでの執筆活動は、いったん休止させていただきます。修行が終わって歴史を書き始めましたら、こちらでまたお世話になろうかと思っています。
その際にはよろしくお願い致します。
※作品を削除(いつか閲覧数がほぼなくなりましたら非公開にする可能性はあります)したり、なんらかのやむをえぬ事情がないかぎりこちらのサイトを退会することはありません。
あらためまして、長きに渡ってご訪問、お付き合いくださいましたこと心より感謝申し上げます。
お付き合い下さいましたすべての皆様のご健康とご活躍を心よりお祈り申し上げます。